Pacta Sunt Servanda

「合意は拘束する」自分自身の学修便宜のため、備忘録ないし知識まとめのブログです。 ブログの性質上、リプライは御期待に沿えないことがあります。記事内容の学術的な正確性は担保致しかねます。 判決文は裁判所ホームページから引用してますが、記事の中ではその旨の言及は割愛いたします。

2018-01-01から1年間の記事一覧

婚姻費用分担審判特別抗告事件(最三決平成20年5月8日) 

憲法32条所定の裁判を受ける権利が性質上固有の司法作用の対象となるべき純然たる訴訟事件につき裁判所の判断を求めることができる権利をいうものであることは,当裁判所の判例の趣旨とするところである(最高裁昭和26年(ク)第109号同35年7月6…

不当利得返還請求事件(最二判平成18年11月27日)

オ 被上告人大学の主張によれば,上告人の母は,平成16年3月26日に被上告人大学に電話をかけた際に,上告人が他の大学から補欠合格の連絡を受けたが,被上告人大学への入学を辞退できるか,辞退した場合,授業料は返してもらえるかを問い合わせたという…

所有権移転登記手続等請求事件(最一判21年4月23日)

区分所有建物について,老朽化等によって建替えの必要が生じたような場合に,大多数の区分所有者が建替えの意思を有していても一部の区分所有者が反対すれば建替えができないということになると,良好かつ安全な住環境の確保や敷地の有効活用の支障となるば…

市議会委員会の傍聴拒否事件(大阪地判平成19年2月16日)

このように,様々な意見,知識,情報に接し,これを摂取する自由は,民主主義社会において,代表者による政治が国民(住民)の批判にさらされ,民意に基づく審議を可能にするための重要な一手段ということができるのである。しかるところ,住民は,地方議会…

参議院議員定数配分規定の合憲性(最大判平成21年9月30日)

3 憲法は,選挙権の内容の平等,換言すれば,議員の選出における各選挙人の投票の有する影響力の平等,すなわち投票価値の平等を要求していると解される。しかしながら,憲法は,どのような選挙制度が国民の利害や意見を公正かつ効果的に国政に反映させるこ…

衆議院小選挙区選挙の選挙区割り・選挙運動に関する公選法規定等の合憲性(最大判平成19年6月13日)

ウ 区画審設置法3条は,1項において,選挙区の改定案の作成につき,選挙区間の人口の最大較差が2倍未満になるように区割りをすることを基本とすべきことを基準として定めており,投票価値の平等に十分な配慮をしていると認められる。その上で,同条は,2…

精神的障碍をもつ人と投票権(最一判平成18年7月13日)

(2)憲法における選挙権保障の趣旨にかんがみれば,国民の選挙権の行使を制限することは原則として許されず,国には,国民が選挙権を行使することができない場合,そのような制限をすることなしには選挙の公正の確保に留意しつつ選挙権の行使を認めること…

広島地判平成20年12月25日

(2)ところで,生活保護を受ける権利は,被保護者自身の最低限度の生活を維持するために当該個人に付与された一身専属的な権利であって,相続の対象になり得ない。また,仮に被保護者の生存中に本来支払うべき給付が支払われていないとしても,当該給付を…

東京高等裁判所平成22年5月27日

原告らが主張するように、老齢加算の廃止によって、老齢加算減額前満額支給時との比較において、保護費全体が約二割の減額になるような場合、激変緩和の措置として、三年間をかけて段階的に廃止することとされたとはいえ、当該満額支給をされていた者にとっ…

東京地判平成20年6月26日

1 法59条1項が定める「配偶者」の概念は,遺族厚生年金が被保険者等の死亡等の場合にその家族の生活を保障する目的で支給される公的給付であることを勘案すると,被保険者等の生活の実態に即し,現実的な観点から理解すべきであって,戸籍上届出のある配…

百選139事件 学生無年金障害者訴訟(最二判平成19年9月28日)

第1 上告代理人新井章ほかの上告理由第1点,第4点のうち昭和60年改正前の法7条2項8号,平成元年改正前の法7条1項1号イの規定等の憲法14条及び25条違反をいう部分について 1 法30条1項1号は,障害基礎年金(昭和60年改正前は障害年金。…

所得税更正処分取消請求事件(福岡高判平成20年10月21日)

納税者は,現在妥当している租税法規に依拠しつつ,現在の法規に従って課税が行われることを信頼しながら各種の取引を行うのであるから,後になってその信頼を裏切ることは,憲法84条が定める租税法律主義が狙いとする一般国民の生活における予測可能性,…

百選89事件 広島市暴走族追放条例事件判決(最三判平成19年9月18日)

なるほど,本条例は,暴走族の定義において社会通念上の暴走族以外の集団が含まれる文言となっていること,禁止行為の対象及び市長の中止・退去命令の対象も社会通念上の暴走族以外の者の行為にも及ぶ文言となっていることなど,規定の仕方が適切ではなく,…

メイプルソープ事件(最三判平成20年2月19日) 

関税定率法21条1項4号に掲げる貨物に関する税関検査が憲法21条2項前段にいう「検閲」に当たらないこと,税関検査によるわいせつ表現物の輸入規制が同条1項の規定に違反しないこと,関税定率法21条1項4号にいう「風俗を害すべき書籍,図画」等と…

百選75事件 NHK記者証言拒絶事件(最三小決平成18年10月3日)

報道関係者の取材源は,一般に,それがみだりに開示されると,報道関係者と取材源となる者との間の信頼関係が損なわれ,将来にわたる自由で円滑な取材活動が妨げられることとなり,報道機関の業務に深刻な影響を与え以後その遂行が困難になると解されるので…

葛飾ビラ配布事件(最二判平成21年11月30日)

第1 弁護人後藤寛ほか及び被告人本人の各上告趣意のうち,本件被告人の行為をもって刑法130条前段の罪に問うことは憲法21条1項に違反するとの主張について 1 原判決の認定及び記録によれば,本件の事実関係は,次のとおりである。 (1) 本件マンシ…

百選63事件 立川テント村事件(最二判平成20年4月11日)

(2) 前記1の立川宿舎の各号棟の構造及び出入口の状況,その敷地と周辺土地や道路との囲障等の状況,その管理の状況等によれば,各号棟の1階出入口から各室玄関前までの部分は,居住用の建物である宿舎の各号棟の建物の一部であり,宿舎管理者の管理に係…

百選74事件 公立図書館図書廃棄事件(最一判平成17年7月14日)

4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。 (1) 図書館は,「図書,記録その他必要な資料を収集し,整理し,保存して,一般公衆の利用に供し,その教養,調査研究,レクリエーション等に資することを目的…

靖国合祀違憲訴訟(大阪地判平成21年2月26日) 

(2) これを本件においてみると,原告らは,被告靖國神社に対し,被告靖國神社が所有する霊璽簿等から,本件戦没者の氏名を抹消すること及び慰謝料の支払を求めているところ,それらの訴訟物は人格権に基づく妨害排除請求権及び不法行為に基づく損害賠償請…

白山比め神社御鎮座二千百年式年大祭奉賛会損害賠償請求事件(最高裁平成22年7月22日)

2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。 (1) 本件神社は,全国に多数存在する白山神社の総社として市内に所在する神社であり,宗教法人である。本件神社は,古来からその存在が知られており,例年多数の初詣の参詣客が訪れるとと…

百選52事件 市有地の神社無償提供事件(最大判平成22年1月20日)

憲法89条は,公の財産を宗教上の組織又は団体の使用,便益若しくは維持のため,その利用に供してはならない旨を定めている。その趣旨は,国家が宗教的に中立であることを要求するいわゆる政教分離の原則を,公の財産の利用提供等の財政的な側面において徹…

Nシステム(東京高判平成21年1月29日)

控訴人らは,技術の常識からも,Nシステムの目的からも,一部又は全部の車両について画像の保存がされていることは明らかであると主張する。 しかしながら,これらは明確な裏付けを欠く憶測にすぎず,控訴人ら主張の事実を認めるに足りる証拠はない。 ア 控…

21事件 住基ネット(最一判平成20年3月6日)

(1) 憲法13条は,国民の私生活上の自由が公権力の行使に対しても保護されるべきことを規定しているものであり,個人の私生活上の自由の一つとして,何人も,個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由を有するものと解される(最高裁…

防犯カメラとプライバシー権(名古屋高判平成17年3月30日)

しかしながら,憲法の基本的人権規定は私人相互の関係を直接規律するものではなく,私的自治に関する一般的制限規定である民法1条,90条や不法行為に関する諸規定等の適用によって間接的に私人間にその趣旨を及ぼすものと解するのが相当であるから,憲法…

百選35事件 国籍法3条1項違憲判決(最大判平成20年6月4日)

(3) 以上によれば,本件区別については,これを生じさせた立法目的自体に合理的な根拠は認められるものの,立法目的との間における合理的関連性は,我が国の内外における社会的環境の変化等によって失われており,今日において,国籍法3条1項の規定は,日…

自治会費と思想の自由(大阪高判平成19年8月24日)

二 ところで、本件決議に係る増額分の年会費二〇〇〇円は、本件各会への募金及び寄付金に充てるために集金され、集金後その年度内に本件各会に募金及び寄付金として支払われることが予定されていたものである。しかし、募金及び寄付金は、その性格からして、…

行政書士会政治献金事件(神戸地裁尼崎支部判平成19年7月17日) 

(2) 次に、原告は、被告に対する不法行為に基づく損害賠償請求の前提となるから本件確認の訴えについて確認の利益があると主張する。本件確認の訴えは、上記(1)及び(2)の決議の無効という過去の法律関係の有効性の確認を求める訴えであるところ、過…

司法書士会注意勧告事件(大阪地判平成19年1月30日) 

司法書士会が行うことができる注意勧告の内容は,会員に対して注意を促し,必要な措置を講ずべきことを勧告するというものであり,本件注意勧告の内容も第2の1,(2),クのとおりのものであって,それ自体は,注意と勧告を行ったにとどまり,原告の権利…

福島県青少年保護育成条例事件(最二判平成21年3月9日)

(4) 所論は,本件機器は,対面販売の実質を有しているので,本条例にいう「自動販売機」に当たらない旨主張する。しかしながら,上記の事実関係によれば,本件機器が対面販売の実質を有しているということはできず,本件機器が客と対面する方法によらずに…

性同一性障碍をもつ人の性別変更請求事件(最三平成19年10月19日)

性同一性障害者につき性別の取扱いの変更の審判が認められるための要件として「現に子がいないこと」を求める性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項3号の規定は,現に子のある者について性別の取扱いの変更を認めた場合,家族秩序に混乱…