Pacta Sunt Servanda

「合意は拘束する」自分自身の学修便宜のため、備忘録ないし知識まとめのブログです。 ブログの性質上、リプライは御期待に沿えないことがあります。記事内容の学術的な正確性は担保致しかねます。 判決文は裁判所ホームページから引用してますが、記事の中ではその旨の言及は割愛いたします。

行政書士会政治献金事件(神戸地裁尼崎支部判平成19年7月17日) 

(2) 次に、原告は、被告に対する不法行為に基づく損害賠償請求の前提となるから本件確認の訴えについて確認の利益があると主張する。本件確認の訴えは、上記(1)及び(2)の決議の無効という過去の法律関係の有効性の確認を求める訴えであるところ、過去の法律関係であっても、それを確定することが現在の法律上の紛争の直接かつ抜本的な解決のために最も適切かつ必要と認められる場合には、その存否ないし有効性の確認を求める訴えは確認の利益があるものとして許容される(最高裁判所第一小法廷昭和四七年一一月九日判決・民集二六巻九号一五一三頁参照)。しかし、上記(1)及び(2)の決議の無効を確認する判決が確定しても、本件決議に基づく予算の執行により原告のどのような権利がどのように侵害されたのかが既判力によって確定されるわけではなく、不法行為に基づく損害賠償請求権の存否が、上記(1)及び(2)の決議の効力に関する疑義が前提となってその決議から派生した法律関係につき発生した法律上の紛争ということもできないから、上記(1)及び(2)の決議の無効を確認することが、原告の損害賠償請求権の存否をめぐる現在の法律上の紛争を直接かつ抜本的に解決することにはならない。また、上記(1)及び(2)の決議の違法、無効は原告の損害賠償請求の当否の審理に当たって検討すれば足り、かかる紛争を離れて決議の有効性を別個独立に確認する必要もない。よって、不法行為に基づく損害賠償請求の前提となることをもって、本件確認の訴えに確認の利益があるということはできない。

オ 本件寄付は、形式上、被告がその一般会計から規制緩和対策費、法改正対策費及び職域開発費という支出科目で支出することを決議した上、これらの支出金を県政連に交付したものであるが、実質的には、被告自身も認めるとおり、被告が自身では行えない行政書士の政治的要求を実現するための政治資金規正法上の政治団体に対して金員を寄付するものであり、かかる寄付を受けた県政連が、実際に、日政連の下部組織として、特定の政党が公認する公職候補者の応援活動を行うなど党派性を帯びた活動を含め、広範な政治活動を行っているのであるから、本件寄付は、被告の目的の範囲外の行為であるといわざるを得ない

カ もっとも、かかる被告の目的の範囲外の行為が原告に対する不法行為を構成するか否かは、別途検討を要する。思うに、本件寄付が被告の目的の範囲外の行為であるとしても、本件寄付自体が民法四三条に違反し、無効となるにとどまり、原告の被告に対する一般会費の納付義務が消滅するわけではないのであるから、被告が本件寄付を行っても、原告に何らかの財産的な損害が発生するとは認められない

 したがって、本件寄付が、被告の目的の範囲外の行為であるとしても、そのことから直ちに本件寄付が原告に対する不法行為を構成するということはできない