Pacta Sunt Servanda

「合意は拘束する」自分自身の学修便宜のため、備忘録ないし知識まとめのブログです。 ブログの性質上、リプライは御期待に沿えないことがあります。記事内容の学術的な正確性は担保致しかねます。 判決文は裁判所ホームページから引用してますが、記事の中ではその旨の言及は割愛いたします。

百選192事件 刑事訴訟法157条の3・157条の4違憲訴訟(最一判平成17年4月14日)

 刑訴法157条の3は,証人尋問の際に,証人が被告人から見られていることによって圧迫を受け精神の平穏が著しく害される場合があることから,その負担を軽減するために,そのようなおそれがあって相当と認められるときには,裁判所が,被告人と証人との間で,一方から又は相互に相手の状態を認識することができないようにするための措置を採り,同様に,傍聴人と証人との間でも,相互に相手の状態を認識することができないようにするための措置を採ることができる(以下,これらの措置を「遮へい措置」という。)とするものである。また,同法157条の4は,いわゆる性犯罪の被害者等の証人尋問について,裁判官及び訴訟関係人の在席する場所において証言を求められることによって証人が受ける精神的圧迫を回避するために,同一構内の別の場所に証人を在席させ,映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話することができる方法によって尋問することができる(以下,このような方法を「ビデオリンク方式」という。)とするものである。

 証人尋問が公判期日において行われる場合,傍聴人と証人との間で遮へい措置が採られ,あるいはビデオリンク方式によることとされ,さらには,ビデオリンク方式によった上で傍聴人と証人との間で遮へい措置が採られても,審理が公開されていることに変わりはないから,これらの規定は,憲法82条1項,37条1項に違反するものではない

 また,証人尋問の際,被告人から証人の状態を認識できなくする遮へい措置が採られた場合,被告人は,証人の姿を見ることはできないけれども,供述を聞くことはでき,自ら尋問することもでき,さらに,この措置は,弁護人が出頭している場合に限り採ることができるのであって,弁護人による証人の供述態度等の観察は妨げられないのであるから,前記のとおりの制度の趣旨にかんがみ,被告人の証人審問権は侵害されていないというべきである。ビデオリンク方式によることとされた場合には,被告人は,映像と音声の送受信を通じてであれ,証人の姿を見ながら供述を聞き,自ら尋問することができるのであるから,被告人の証人審問権は侵害されていないというべきである。さらには,ビデオリンク方式によった上で被告人から証人の状態を認識できなくする遮へい措置が採られても,映像と音声の送受信を通じてであれ,被告人は,証人の供述を聞くことはでき,自ら尋問することもでき,弁護人による証人の供述態度等の観察は妨げられないのであるから,やはり被告人の証人審問権は侵害されていないというべきことは同様である。したがって,刑訴法157条の3,157条の4は,憲法37条2項前段に違反するものでもない。