Pacta Sunt Servanda

「合意は拘束する」自分自身の学修便宜のため、備忘録ないし知識まとめのブログです。 ブログの性質上、リプライは御期待に沿えないことがあります。記事内容の学術的な正確性は担保致しかねます。 判決文は裁判所ホームページから引用してますが、記事の中ではその旨の言及は割愛いたします。

百選85事件 皇居前広場事件(最大判昭和28年12月23日)

 上告人の原審における本訴請求の趣旨は、上告人の昭和二六年一一月一〇日附「昭和二七年五月一日メーデーのための皇居外苑使用許可申請」に対して被上告人が同年三月一三日になした不許可処分は違法であるから、これが取消を求めるというのである。そして、実体法が訴訟上行使しなければならないものとして認めた形成権に基ずくいわゆる狭義の形成訴訟の場合にあつては、法律がかかる形成権を認めるに際して当然訴訟上保護の利益あるようその内容を規定しているのであるから、抽象的には所論のごとくその権利発生の法定要件を充たす限り一応その訴は保護の利益あるものといい得るであろう。しかし、狭義の形成訴訟の場合においても、形成権発生後の事情の変動により具体的に保護の利益なきに至ることあるべきは多言を要しないところである。(例えば離婚の訴提起後協議離婚の成立した場合の如きである。)また、被上告人は同年五月一日における皇居外苑の使用を許可しなかつただけで、上告人に対して将来に亘り使用を禁じたものでないことも明白である。されば、上告人の本訴請求は、同日の経過により判決を求める法律上の利益を喪失したものといわなければならない。そして、原判決は、上告人の本訴請求を権利保護の利益なきものとして棄却の裁判をしたものであつて、裁判そのものを拒否したものではなく、憲法三二条に違反したものとはいえない。また、原判決は、本訴のごとき訴は、所期の日時までに確定判決を受けることも不可能ではないと判断したものであるから、憲法七六条二項の保障に反したものともいえない。されば、原判決は正当であつて、所論はその理由がない