Pacta Sunt Servanda

「合意は拘束する」自分自身の学修便宜のため、備忘録ないし知識まとめのブログです。 ブログの性質上、リプライは御期待に沿えないことがあります。記事内容の学術的な正確性は担保致しかねます。 判決文は裁判所ホームページから引用してますが、記事の中ではその旨の言及は割愛いたします。

行政法 処分性の判例

1 最高裁判所第一小法廷昭和30年2月24日 判決民集 第9巻2号217頁

行政事件訴訟特例法が行政処分の取消変更を求める訴を規定しているのは、公権力の主体たる国又は公共団体がその行為によつて、国民の権利義務を形成し、或はその範囲を確定することが法律上認められている場合に、具体的の行為によつて権利を侵された者のために、その違法を主張せしめ、その効力を失わしめるためである。

 

2 最高裁判所大法廷平成20年9月10日判決

そうすると,施行地区内の宅地所有者等は,事業計画の決定がされることによって,前記のような規制を伴う土地区画整理事業の手続に従って換地処分を受けるべき地位に立たされるものということができ,その意味で,その法的地位に直接的な影響が生ずるものというべきであり,事業計画の決定に伴う法的効果が一般的,抽象的なものにすぎないということはできない。

 

3 最高裁判所第一小法廷平成7年3月23日判決

 右のような定めは、開発行為が、開発区域内に存する道路、下水道等の公共施設に影響を与えることはもとより、開発区域の周辺の公共施設についても、変更、廃止などが必要となるような影響を与えることが少なくないことにかんがみ事前に 、開発行為による影響を受けるこれらの公共施設の管理者の同意を得ることを開発許可申請の要件とすることによって、開発行為の円滑な施行と公共施設の適正な管理の実現を図ったものと解される。そして 国若しくは地方公共団体又はその機関( 以下「行政機関等」という )が公共施設の管理権限を有する場合には、行政機関等が法三二条の同意を求める相手方となり行政機関等が右の同意を拒否する行為は、公共施設の適正な管理上当該開発行為を行うことは相当でない旨の公法上の判断を表示する行為ということができる。この同意が得られなければ、公共施設に影響を与える開発行為を適法に行うことはできないが、これは、法が前記のような要件を満たす場合に限ってこのような開発行為を行うことを認めた結果にほかならないのであって、右の同意を拒否する行為それ自体は、開発行為を禁止又は制限する効果をもつものとはいえない。したがって、開発行為を行おうとする者が、右の同意を得ることができず、開発行為を行うことができなくなったとしても、その権利ないし法的地位が侵害されたものとはいえないから、右の同意を拒否する行為が、国民の権利ないし法律上の地位に直接影響を及ぼすものであると解することはできない

 

4 最高裁判所第一小法廷 平成15年9月4日 判決

 このような労災就学援護費に関する制度の仕組みにかんがみれば,法は,労働者が業務災害等を被った場合に,政府が,法第3章の規定に基づいて行う保険給付を補完するために,労働福祉事業として,保険給付と同様の手続により,被災労働者又はその遺族に対して労災就学援護費を支給することができる旨を規定しているものと解するのが相当である。そして,被災労働者又はその遺族は,上記のとおり,所定の支給要件を具備するときは所定額の労災就学援護費の支給を受けることができるという抽象的な地位を与えられているが,具体的に支給を受けるためには,労働基準監督署長に申請し,所定の支給要件を具備していることの確認を受けなければならず,労働基準監督署長の支給決定によって初めて具体的な労災就学援護費の支給請求権を取得するものといわなければならない。

 そうすると,労働基準監督署長の行う労災就学援護費の支給又は不支給の決定は,法を根拠とする優越的地位に基づいて一方的に行う公権力の行使であり,被災労働者又はその遺族の上記権利に直接影響を及ぼす法的効果を有するものであるから,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるものと解するのが相当である。論旨は理由がある。

 

5 最高裁判所大法廷昭和36年3月15日 判決

 すなわちこの裁決は、上述の海難の原因を明らかにする裁決であつて、被上告人に何等かの義務を課しもしくはその権利行使を妨げるものでないことは、法律の規定及び裁決自体によつて明らかであり、被上告人の過失を確定する効力もないことは後述するとおりである。そうだとすれば、本件裁決は被上告人の権利義務に直接関係のない裁決であつて、これを行政処分と解することはできず、被上告人から出訴することは許されないものとしなければならない