Pacta Sunt Servanda

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不当利得返還請求事件(最二判平成18年11月27日)

 オ 被上告人大学の主張によれば,上告人の母は,平成16年3月26日に被上告人大学に電話をかけた際に,上告人が他の大学から補欠合格の連絡を受けたが,被上告人大学への入学を辞退できるか,辞退した場合,授業料は返してもらえるかを問い合わせたというのである。そして,上記電話に応対した被上告人大学の職員は,授業料の返還を受けるための入学辞退届は同月25日必着で提出しなければならない旨及び入学式に出席しなければ入学辞退として取り扱う旨同人に述べたこと,上告人は,同年4月2日の被上告人大学の入学式に欠席することによって本件在学契約を解除する旨の意思表示をしたことは,上記のとおりである。そして,本件において,前記(1)クにおいて説示する原則と異なる事情も証拠上うかがわれないから,同年3月31日までの在学契約の解除については,被上告人大学に生ずべき平均的な損害はなく,本件不返還特約は無効であるところ,上記のような事実関係によれば,被上告人大学の職員の上告人の母に対する上記発言により,上告人は,既に入学辞退を決めていたのに,その手続を3月31日まで執らずに4月2日の入学式に欠席することにより済まそうとしたものと推認され,結果的に上告人において同年3月31日までに本件在学契約を解除する機会を失わせたものというべきであるから,被上告人大学において,本件在学契約が同年4月1日以降に解除されたことを理由に,本件不返還特約が有効である旨主張して本件授業料の返還を拒むことは許されないものというべきである。そうすると,被上告人大学は,上告人に対し,本件授業料80万円を返還する義務を負う。