Pacta Sunt Servanda

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司法書士会注意勧告事件(大阪地判平成19年1月30日) 

 司法書士会が行うことができる注意勧告の内容は,会員に対して注意を促し,必要な措置を講ずべきことを勧告するというものであり,本件注意勧告の内容も第2の1,(2),クのとおりのものであって,それ自体は,注意と勧告を行ったにとどまり,原告の権利利益に影響を及ぼすものということはできない。

 しかし,前記認定事実によれば,被告がその会員に対して注意勧告を行ったときは,被告の会長は,被告に備える会員名簿に注意又は勧告決定の年月日及び決定の趣旨を登載し(注意勧告運用規則16条1項),被告は,注意勧告をしたことを,日本司法書士会連合会に対して通知する(注意勧告運用規則21条)ものとされているほか,被告の事務所の所在地を管轄する法務局等の長に報告しなければならないとされている(司法書士法施行規則41条)。以上は,注意勧告がされた場合に必然的に措置されるものであり,また,上記通知及び報告の相手方が,前者については司法書士会の上部団体である日本司法書士会連合会であり,後者については司法書士に対する懲戒権を有する大阪法務局長であることからすると,会員が被告から注意勧告を受けるということは,被告の内部における出来事にとどまらず,当該会員の司法書士たる身分及びその業務に関して支障を生じさせるものであるということができる。被告が注意勧告をする場合には,綱紀委員会の調査及び注意勧告小理事会の審査,議決という各手続を経ることとし,調査及び審査を受ける会員に対しては,各手続ごとに弁明の機会を与え,さらに,注意勧告に不服のある会員には,再調査の申立てをすることを認めるのは,注意勧告が上記のような影響を及ぼすものであるから,法律の委任を受けた被告会則並びにその細則である綱紀委員会規則及び注意勧告運用規則(以下,これらを併せて「被告会則等」という。)において注意勧告に関する手続の適正を担保しているものと解される。

 以上によれば,本件注意勧告は,原告に対する事実上の不利益とか,被告の内部的な規律問題とかにとどまるものではなく,原告の一般市民法秩序における権利利益に影響を与えるものであるというべきである。したがって,本件注意勧告の適否は,司法審査の対象となるというべきである。