Pacta Sunt Servanda

「合意は拘束する」自分自身の学修便宜のため、備忘録ないし知識まとめのブログです。 ブログの性質上、リプライは御期待に沿えないことがあります。記事内容の学術的な正確性は担保致しかねます。 判決文は裁判所ホームページから引用してますが、記事の中ではその旨の言及は割愛いたします。

百選130事件 家事審判法による審判の合憲性(最大決定昭和40年6月30日)

これを要するに、夫婦の一方が故なく同居しない、又は同居させない場合に、他の一方から同居すべきこと又は同居させるべきことを求める争訟においては、同居義務の存否を確認し、義務ありとすればこれが履行を命ずる裁判をなすべきであつて、その性質は、純然たる訴訟事件であり、固より形成訴訟ではない。従つて、かかる請求権の存否を確定するには公開の手続による対審、判決によつて裁判すべきものであつて、このことは人事訴訟手続法一条一項から夫婦の同居を目的とする訴が削除された現在でも、なお一般民事訴訟として訴を提起し得るものと解すべきである。従つて、「夫婦でないから同居の義務がない」とか、「夫婦であるが、同居請求が権利濫用であるから、これに応ずる義務がない」とかといつたような夫婦関係の存否又は同居請求が権利濫用であるか否か等について争がある場合に、その争を単なる非訟事件手続により審理し、決定で終局的に裁判することは許されないものというべきである。このことは、遺産分割の審判が、相続権自体の有無に対し、既判力を有しないのと同様である。若し、家庭裁判所が同居義務なしとして申立を却下し、その審判が確定した場合に、これがため夫婦同居義務不存在が単なる非訟事件手続による決定により、終局的に確定されるものとすれば、前示大法廷判例の趣旨に反し、正に前記憲法の規定に反するものといわざるを得ないであろう。