Pacta Sunt Servanda

「合意は拘束する」自分自身の学修便宜のため、備忘録ないし知識まとめのブログです。 ブログの性質上、リプライは御期待に沿えないことがあります。記事内容の学術的な正確性は担保致しかねます。 判決文は裁判所ホームページから引用してますが、記事の中ではその旨の言及は割愛いたします。

百選105事件 私有財産を「公共のために用ひる」の意義(最二判昭和29年1月22日)

 論旨は、本件の宅地はD外三名の耕作者が夫々住家を設けその敷地等に使用しているのであるから、被上告人が本件宅地を買収しても右D外三名に売渡す外なく、結局買収の目的は特定個人四名の耕作者の利益を図ることに存するから、公共性がなく憲法二九条三項に違反するというのであるが、自創法による農地改革は、同法一条に、この法律の目的として掲げたところによつて明らかなごとく、耕作者の地位を安定し、その労働の成果を公正に享受させるため自作農を急速且つ広汎に創設し、又、土地の農業上の利用を増進し、以て農業生産力の発展と農村における民主的傾向の促進を図るという公共の福祉の為の必要に基いたものであるから、自創法により買収された農地、宅地、建物等が買収申請人である特定の者に売渡されるとしても、それは農地改革を目的とする公共の福祉の為の必要に基いて制定された自創法の運用による当然の結果に外ならないのであるから、この事象のみを捉えて本件買収の公共性を否定する論旨は自創法の目的を正解しないに出た独自の見解であつて採用できない。(昭和二八年一一月二五日言渡同二四年(オ)一〇七号大法廷判決参照)