Pacta Sunt Servanda

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地価高騰と財産権(大阪地判平成7年10月17日)

 ただ、本件特例の根拠条文である措置法六九条の四第一項によれば、文言上は何らの限定も付されていないから、この法律は具体的な相続を巡る個別的事情は一切問わず、相続開始前三年以内に被相続人が取得した土地等については一律にこれを適用すべきものとされているようにも解されるのであり、これからすれば、(二)のような場合についても本件特例が適用されることになる。しかし、前記認定の本件特例の立法のいきさつやその立法目的に照らすと、そもそも本件特例は、これを適用することにより前記のような著しく不公平、不合理な結果が生じるような事案についてまでこれが適用されることを予定していたとは考えられないのである。

 もし、本件特例が右のような事案についてまで適用されるべきものとすれば、右土地のような財産を相続した相続人は、相続により取得した財産以上の財産的価値を相続税の名の下に国家に収奪されることになるのであるが、このようなことは本件特例が租税回避行為に対する制裁等として租税を賦課することを目的としているような場合でもない限り、全くその合理性を欠き、到底許されるものではない。ちなみに、本件特例の立法目的に右のような制裁目的が含まれていないことは、前記のとおり、右法律を適用するために、租税回避の意図の有無等、土地取得者の主観的要件を必要としていないことからも明らかである。この意味において、本件特例を(二)の事実のような場合にまで無制限に適用することについては憲法違反(財産権の侵害)の疑いが極めて強いといわなければならないが、仮にこのような考え方が容れられないとしても、少なくとも本件特例を適用することにより、著しく不合理な結果を来すことが明らかであるというような特別の事情がある場合にまでこれを適用することは、右法律の予定していないところと言いうべきであって、これを適用することはできないといわざるを得ない。