Pacta Sunt Servanda

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百選90事件 道交法による集団行進の規制(最三判昭和57年11月16日)

 しかし、道交法及び長崎県道交法施行細則の右各規定は、「道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、及び道路の交通に起因する障害の防止に資する」という目的(道交法一条参照)のもとに、道路を使用して集団行進をしょうとする者に対しあらかじめ所轄警察署長の許可を受けさせることにしたものであるところ、同法七七条二項の規定は、道路使用の許可に関する明確かつ合理的な基準を掲げて道路における集団行進が不許可とされる場合を厳格に制限しており、これによれば、道路における集団行進に対し同条一項の規定による許可が与えられない場合は、当該集団行進の予想される規模、態様、コース、時刻などに照らし、これが行われることにより一般交通の用に供せられるべき道路の機能を著しく害するものと認められ、しかも、同条三項の規定に基づき警察署長が条件を付与することによつても、かかる事態の発生を阻止することができないと予測される場合に限られることになるのであつて、右のような場合にあたらない集団行進に対し警察署長が同条一項の規定による許可を拒むことは許されないものと解される。しかして、憲法二一条は、表現の自由を無条件に保障、したもりではなく、公共の福祉のため必要かつ合理的な制限を是認するものであることは、当裁判所の確立した判例(昭和三五年(あ)第一一二号同年七月二〇日大法廷判決・刑集一四巻九号一二四三頁、同四一年(あ)第五三六号同国三年一二月一八日大法廷判決・刑集二二巻一三号一五四九頁、同四二年(あ)第一六二六号同四五年六月一七目大法廷判決・刑集二四巻六号二八〇頁、同三四年(あ)第一五四〇号同三五年三月三目第一小法廷判決・刑集一四巻三号二五三頁)であつて、前記のような目的のもとに、道路における集団行進に対し右の程度の規制をする道交法七七条一項四号、長崎県道交法施行細則一五条三号の各規定が、表現の自由に対する会共の福祉による必要かつ合理的な制限として憲法上是認されるべきものであることは、これらの判例の趣旨に徴し明らかなところである。所論は、理由がない。