Pacta Sunt Servanda

「合意は拘束する」自分自身の学修便宜のため、備忘録ないし知識まとめのブログです。 ブログの性質上、リプライは御期待に沿えないことがあります。記事内容の学術的な正確性は担保致しかねます。 判決文は裁判所ホームページから引用してますが、記事の中ではその旨の言及は割愛いたします。

各損害賠償(シベリア抑留)( 最高裁判所第一小法廷判決 平成9年3月13日 民集第51巻3号1233頁)

一 上告代理人の上告理由第一について 捕虜の待遇に関する一九四九年八月一二日のジュネーブ条約(以下「四九年ジュネーブ条約」という。)が我が国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間において効力を生ずる以前に捕虜たる身分を終了した者の法律関係の処…

損害賠償請求事件(待婚期間)(最大判平成27年12月16日民集第69巻8号2427頁)

本件規定の立法目的は,父性の推定の重複を回避し,もって父子関係をめぐる紛争の発生を未然に防ぐことにあると解されるところ,民法772条2項は,「婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は…

窃盗,建造物侵入,傷害被告事件(GPS捜査)( 最大判平成29年3月15日刑集第71巻3号13頁)

個人のプライバシーの侵害を可能とする機器をその所持品に秘かに装着することによって,合理的に推認される個人の意思に反してその私的領域に侵入する捜査手法であるGPS捜査は,個人の意思を制圧して憲法の保障する重要な法的利益を侵害するものとして,…

まだ細々と続けています

ずっと更新していなかった。 いっとき、Hatena Blogがなくなるなんて話もあったが、今日見たらまだ見られるし、ログインもできるじゃないか。 実はまだ旗は降ろしておらず、細々と勉強は続けている。 今日は予備試験短答を三田で受けてきた。 自己採点結果は…

行政法 原告適格の判例 その4

4 最高裁判所第二小法廷 平成元年2月17日 判決 新潟─小松─ソウル間の定期航空運送事業免許処分取消請求事件 法は、国際民間航空条約の規定並びに同条約の附属書として採択された標準、方式及び手続に準拠しているものであるが、航空機の航行に起因する障害の…

行政法 原告適格の判例 その3

3 最高裁判所第三小法廷 平成4年9月22日判決 原子炉設置許可処分無効確認等請求事件 行政事件訴訟法九条は、取消訴訟の原告適格について規定するが、同条にいう当該処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」とは、当該処分により自己の権利若し…

行政法 原告適格の判例 その2

2 最高裁判所第一小法廷 平成21年10月15日判決 場外車券発売施設設置許可処分取消請求事件 (1) 行政事件訴訟法9条は,取消訴訟の原告適格について規定するが,同条1項にいう当該処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」とは,当該処分により…

行政法 原告適格の判例

1 最高裁判所大法廷 平成17年12月7日判決 小田急線連続立体交差事業認可処分取消,事業認可処分取消請求事件 (1) 行政事件訴訟法9条は,取消訴訟の原告適格について規定するが,同条1項にいう当該処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」と…

行政法 処分性の判例 その5

14 最高裁判所第二小法廷 平成18年7月14日判決 給水条例無効確認等請求事件 本件別表の無効確認を求める被上告人らの訴えは,本件改正条例の制定行為が抗告訴訟の対象となる行政処分に当たることを前提に,行政事件訴訟法3条4項の無効等確認の訴えとして,…

行政法 処分性の判例 その4

13 最高裁判所第一小法廷平成21年11月26日判決 横浜市立保育園廃止処分取消請求事件 このように,被上告人における保育所の利用関係は,保護者の選択に基づき,保育所及び保育の実施期間を定めて設定されるものであり,保育の実施の解除がされない限り(同法…

行政法 処分性の判例 その3

10 最高裁判所第二小法廷平成17年7月15日 判決 勧告取消等請求事件 上記の医療法及び健康保険法の規定の内容やその運用の実情に照らすと,医療法30条の7の規定に基づく病院開設中止の勧告は,医療法上は当該勧告を受けた者が任意にこれに従うことを期待し…

行政法 処分性の判例 その2

6 最高裁判所大法廷昭和59年12月12日 判決 輸入禁制品該当通知処分等取消 被上告人らは、三号物件に該当する貨物につき輸入が禁止されること自体は、同条一項の規定により一般的に生じている効力によるものであつて、この税関長の通知は、右条項により生じた…

行政法 処分性の判例

1 最高裁判所第一小法廷昭和30年2月24日 判決民集 第9巻2号217頁 行政事件訴訟特例法が行政処分の取消変更を求める訴を規定しているのは、公権力の主体たる国又は公共団体がその行為によつて、国民の権利義務を形成し、或はその範囲を確定することが法律上認…

婚姻費用分担審判特別抗告事件(最三決平成20年5月8日) 

憲法32条所定の裁判を受ける権利が性質上固有の司法作用の対象となるべき純然たる訴訟事件につき裁判所の判断を求めることができる権利をいうものであることは,当裁判所の判例の趣旨とするところである(最高裁昭和26年(ク)第109号同35年7月6…

不当利得返還請求事件(最二判平成18年11月27日)

オ 被上告人大学の主張によれば,上告人の母は,平成16年3月26日に被上告人大学に電話をかけた際に,上告人が他の大学から補欠合格の連絡を受けたが,被上告人大学への入学を辞退できるか,辞退した場合,授業料は返してもらえるかを問い合わせたという…

所有権移転登記手続等請求事件(最一判21年4月23日)

区分所有建物について,老朽化等によって建替えの必要が生じたような場合に,大多数の区分所有者が建替えの意思を有していても一部の区分所有者が反対すれば建替えができないということになると,良好かつ安全な住環境の確保や敷地の有効活用の支障となるば…

市議会委員会の傍聴拒否事件(大阪地判平成19年2月16日)

このように,様々な意見,知識,情報に接し,これを摂取する自由は,民主主義社会において,代表者による政治が国民(住民)の批判にさらされ,民意に基づく審議を可能にするための重要な一手段ということができるのである。しかるところ,住民は,地方議会…

参議院議員定数配分規定の合憲性(最大判平成21年9月30日)

3 憲法は,選挙権の内容の平等,換言すれば,議員の選出における各選挙人の投票の有する影響力の平等,すなわち投票価値の平等を要求していると解される。しかしながら,憲法は,どのような選挙制度が国民の利害や意見を公正かつ効果的に国政に反映させるこ…

衆議院小選挙区選挙の選挙区割り・選挙運動に関する公選法規定等の合憲性(最大判平成19年6月13日)

ウ 区画審設置法3条は,1項において,選挙区の改定案の作成につき,選挙区間の人口の最大較差が2倍未満になるように区割りをすることを基本とすべきことを基準として定めており,投票価値の平等に十分な配慮をしていると認められる。その上で,同条は,2…

精神的障碍をもつ人と投票権(最一判平成18年7月13日)

(2)憲法における選挙権保障の趣旨にかんがみれば,国民の選挙権の行使を制限することは原則として許されず,国には,国民が選挙権を行使することができない場合,そのような制限をすることなしには選挙の公正の確保に留意しつつ選挙権の行使を認めること…

広島地判平成20年12月25日

(2)ところで,生活保護を受ける権利は,被保護者自身の最低限度の生活を維持するために当該個人に付与された一身専属的な権利であって,相続の対象になり得ない。また,仮に被保護者の生存中に本来支払うべき給付が支払われていないとしても,当該給付を…

東京高等裁判所平成22年5月27日

原告らが主張するように、老齢加算の廃止によって、老齢加算減額前満額支給時との比較において、保護費全体が約二割の減額になるような場合、激変緩和の措置として、三年間をかけて段階的に廃止することとされたとはいえ、当該満額支給をされていた者にとっ…

東京地判平成20年6月26日

1 法59条1項が定める「配偶者」の概念は,遺族厚生年金が被保険者等の死亡等の場合にその家族の生活を保障する目的で支給される公的給付であることを勘案すると,被保険者等の生活の実態に即し,現実的な観点から理解すべきであって,戸籍上届出のある配…

百選139事件 学生無年金障害者訴訟(最二判平成19年9月28日)

第1 上告代理人新井章ほかの上告理由第1点,第4点のうち昭和60年改正前の法7条2項8号,平成元年改正前の法7条1項1号イの規定等の憲法14条及び25条違反をいう部分について 1 法30条1項1号は,障害基礎年金(昭和60年改正前は障害年金。…

所得税更正処分取消請求事件(福岡高判平成20年10月21日)

納税者は,現在妥当している租税法規に依拠しつつ,現在の法規に従って課税が行われることを信頼しながら各種の取引を行うのであるから,後になってその信頼を裏切ることは,憲法84条が定める租税法律主義が狙いとする一般国民の生活における予測可能性,…

百選89事件 広島市暴走族追放条例事件判決(最三判平成19年9月18日)

なるほど,本条例は,暴走族の定義において社会通念上の暴走族以外の集団が含まれる文言となっていること,禁止行為の対象及び市長の中止・退去命令の対象も社会通念上の暴走族以外の者の行為にも及ぶ文言となっていることなど,規定の仕方が適切ではなく,…

メイプルソープ事件(最三判平成20年2月19日) 

関税定率法21条1項4号に掲げる貨物に関する税関検査が憲法21条2項前段にいう「検閲」に当たらないこと,税関検査によるわいせつ表現物の輸入規制が同条1項の規定に違反しないこと,関税定率法21条1項4号にいう「風俗を害すべき書籍,図画」等と…

百選75事件 NHK記者証言拒絶事件(最三小決平成18年10月3日)

報道関係者の取材源は,一般に,それがみだりに開示されると,報道関係者と取材源となる者との間の信頼関係が損なわれ,将来にわたる自由で円滑な取材活動が妨げられることとなり,報道機関の業務に深刻な影響を与え以後その遂行が困難になると解されるので…

葛飾ビラ配布事件(最二判平成21年11月30日)

第1 弁護人後藤寛ほか及び被告人本人の各上告趣意のうち,本件被告人の行為をもって刑法130条前段の罪に問うことは憲法21条1項に違反するとの主張について 1 原判決の認定及び記録によれば,本件の事実関係は,次のとおりである。 (1) 本件マンシ…

百選63事件 立川テント村事件(最二判平成20年4月11日)

(2) 前記1の立川宿舎の各号棟の構造及び出入口の状況,その敷地と周辺土地や道路との囲障等の状況,その管理の状況等によれば,各号棟の1階出入口から各室玄関前までの部分は,居住用の建物である宿舎の各号棟の建物の一部であり,宿舎管理者の管理に係…